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2014.04.03

「弱い」デザイン

 
 平凡社の『現代デザイン事典』は、5年に1度の改訂の年以外は、12ページの巻頭特集を毎年更新して刊行されているのですが、カワイイファクトリーはこの特集ページの編集を2008年版から担当しています。
 
毎年、監修の勝井三雄、向井周太郎、編集委員の伊東順二、柏木博の各氏が編集会議でテーマを検討、決定したところで私たちが事例を集め、掲載許可および画像申請をし、それぞれのキャプション原稿を執筆し、論考エッセイを依頼、集まったところでデザイン事務所に入稿、校正……という段取りで進行します。
 
デザイン担当は勝井デザイン事務所。日本のグラフィックデザインの大御所・勝井先生の辞書には「妥協」という文字は載っていませんから、最後まで「闘い」です。私たちは千本ノックを受け続けるのです。
 
いま書店に並んでいるの2014年版の特集は「弱いデザイン」。
なにそれ? って思いますよね。「弱いデザイン」とは何なのか、それにどのような意義があるのか。ぜひ本書を手にとっていただければと思いますが、私たちも当初はどうやってまとめるか、事例を集めるのか、途方にくれました。
 
掲載をお願いした際にも「これはどういうことですか?」と多くの方に訊かれました。シューマッハの「スモール・イズ・ビューティフル」——巨大化・複雑化した経済や技術が、人間と自然環境にとって暴力的になっていると指摘し、そこからの脱却の必要性を説いた本からスタートしたテーマであること、いま、寛容の精神をもつデザインこそが、混迷する時代の可能性をひらくものであること……という拙い回答にかかわらず、ご協力いただいた方々に心から感謝します。
 
「弱い」というテーマについては、最近の例だけでも、イタリアの哲学者、ヴァッティモのアンソロジー『弱い思考』 (法政大学出版局、2012年)、岡田美智男『弱いロボット』(医学書院、2012年)、高橋源一郎+辻信一『弱さの思想』(大月書店、2014年)などが刊行されています。千本ノックを終えたいま、あらためて勉強してみようと考えています。