True Ring/お知らせ

2012.09.19

『Fukushima』の写真、ウィーンへ

会場となるレオポルト美術館
Leopold Museum© Leopold Museum
 
 
弊社より刊行の写真集『Fukushima—福島県双葉郡楢葉町1998-2006』の著者、市川勝弘による本書のオリジナルプリントが、この9月28日より来年の1月14日までウィーンにあるレオポルト美術館で展示されることになりました。
 
レオポルト美術館は2001年に開館した私設美術館。ルドルフとエリサベート・レオポルト夫妻の個人コレクションが基になっています。美術館が集まる区域、ミュージアム・クォーター・ウィーンにあり、オーストリアを代表する画家、エゴン・シーレの世界最大のコレクションを所蔵するほか、ウィーン分離派で名高い巨匠クリムトやウィーン工房、ユーゲントシュティールの家具などで人気の高い美術館です。
 
市川が参加するのは、「Japan – Fragility of Existence」(日本—存在のはかなさ)と題した展覧会で、水墨画、浮世絵、書画、日本画など12世紀から現代までの日本をテーマとした美術を紹介するものです。市川の写真は現在の日本を紹介するセクションに登場し、本書のオリジナルプリント30点あまりを展示するとのことです。
 
なぜ、市川の写真がウィーンで展示されることになったのでしょうか。
きっかけは、昨年、あるオーストリアのジャーナリストが東日本大震災を取材するなかで、スパイラルで開催していた市川の写真展「日常」を偶然見て、そのことを取り上げたことに端を発します。
 
震災後、展覧会の企画者であるレオポルド美術館のキュレーター、レオポルドさんは、過去から現在につらなる日本という国の「はかなさ」をテーマに展覧会を企画したいと考えていました。 そして、現在のセクションでは震災後の日本を考えるために写真を展示することとし、来日して自らリサーチをおこなっていました。
 
大の日本びいきでもある彼はウィーン世紀末が日本美術と密接な関係があること、日本とウィーンは芸術において深いつながりをもっていることを踏まえ、レオポルト美術館としても友愛の証として今こそ日本をテーマに展覧会を開催すべきだと考えていたようです。
 
しかし、震災に関連する写真といえば、がれきの山や津波の押し寄せる写真がほとんどでした。それらは報道記録としては重要ですが、これからの日本やかつての日本について考えるには、あまりにもつらすぎると感じたということです。
そのような折り、先ほどのオーストリアのジャーナリストが発表した震災に関する本を見ていて、市川の写真に目がとまりました。「これだ!」と即座にピンときたレオポルドさんは、この写真を展覧会の最後に見せることで、日本の過去、現在、そして未来が見えるはずだと確信したのだそうです。
 
この4月、わたしたちは写真展のきっかけをつくった写真集の版元として、写真家に誘われ、彼とともに初めてレオポルトさんに会いました。いちばん最初の写真展「日常」の開催時にはまだできていなかった、写真集を彼に見せました。写真のキャプションは、そのまま展示にも役立てられそうです。日本の農家の暮らしや農作業などについて、ヨーロッパの観客にも関心をもってもらえるとしたら、またこれらの世界が原発事故によって奪われてしまったことも伝えることができるならば、これほどうれしいことはありません。
 
レオポルト美術館の公式サイトでの市川に関するセクションの説明にはこうあります。
 
 
Over the course of a number of years, the Japanese photographer Katsuhiro
Ichikawa documented thesurroundings in which his parents-in-law lived, only a few miles from the atomic power plant Fukushima. Today the area is uninhabitable as a result of the reactor accident. The still photos show a paradise lost on account of human failure.
 
数年にわたり、日本の写真家、市川勝弘は彼の舅姑が住んでいた福島第一原子力発発電所からほんの数マイルしか離れていない場所を記録した。今日この地域は、原発事故によって住めない状態が続いている。これらの写真が示しているのは、人類の失敗が生み出した「失楽園」ともいえる。
 

今回は美術館カタログは特に制作する予定はなく、写真集がカタログの代わりに販売されます。

 

Japan ‐ Fragility of Existence
会期:2012年9月28日(金)〜2013年2月4日(月)

会場:レオポルト美術館(ウィーン)


展覧会チラシPDFはこちらから

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