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2009.06.29

れろれろくん

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シリーズ中もっとも絵本らしい絵本と言えるかもしれない。というのも、美術家の岡崎 乾二郎と詩人のぱく きょんみには、かつて二人で絵本を作って出版する計画があったのだ。20年以上も前のことで、出版社の倒産などの事情から、ほぼ完成していたにもかかわらずお蔵入りになっていたのだという。だから、岡崎にははじめから絵本というヴィジョンがあった。
この企画を最初にお願いしたとき、彼が即座に描いてみせたのが「よっちゃん」という女の子の絵だった。しかもそれは全く同じ絵をコピーしたものを並べたふたりのよっちゃんだった。おかっぱ頭で、利発そうな目をしたこの女の子を出発点に、ぱくがお話をつくることになった。
できあがったお話は、主人公がれろれろくんという男の子になっていた。彼は空を飛び、分身の術のように増殖し、過去と未来を縦横に駆け巡る。そして100人のよっちゃんに出会う。かわいくてほほえましいボーイ・ミーツ・ガールの物語の祖型がそこにあった。
リズミカルでシャープ、さらにユーモアもあるぱくの文章を読んだ岡崎は、とんでもなく破天荒な構図を駆使し、時間も空間も自在な世界を視覚化してみせた。デジタル技術によって無限の可能性を手に入れた色と線が、印刷という制約のある世界に置き換えられている。
岡崎は美術批評の論客としても舌鋒鋭く、ときに現代美術の「び」の字も知らない人から見ると、言っていることも作っている作品も難解だと受け取られがちな作家だ。そんな彼の、ほかでは見られないお茶目な一面がよく現れているのが本書だと思う。

 

絵 岡崎 乾二郎
文 ぱく きょんみ
英訳 ジュリエット・カーペンター
装幀・デザイン 伊丹 友宏、大野 美奈+堀部 史朗(イットイズデザイン)
企画・編集 カワイイファクトリー、小学館
印刷所 日本写真印刷株式会社
製本所 株式会社難波製本
発行年 2004年
発行所 小学館
ISBN4-09-681742-2

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