編集

2009.06.29

ヴィアッジョ-空を巡る旅

viaggio.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

廣瀬智央は1991年にイタリアに留学して以来、ミラノに住み活動を続けている。1997年、私たちは東京の資生堂ギャラリーで行われた彼の個展「レモンプロジェクト03」を見た。レモン1万個を床に敷き詰めたインスタレーション(空間展示)作品で、鮮やかな黄とさわやかな香り、そして軽やかな空気が印象的だった。このときの出会いがきっかけになり、私たちが当時制作を担当していた企業広報誌『スパイラルペーパー』紙上で彼にアートワークをお願いすることになった。
そこで彼が提案してくれたプランは、空しか写っていない写真を並べるというものだった。観音開きを広げると、さまざまな土地の空がただひたすらつながっている。日常生活で、旅した世界中の土地で、あるいは移動中の飛行機の窓から、廣瀬は空だけをフレーミングしてカメラに納めている。空をモチーフに移動と時間の認識を問うこのシリーズは、彼の継続的な仕事なのだった。
広報誌の仕上がりは素晴らしくうまくいった。付録につけた空のポストカードを、読者と作家のコミュニケーションツールとしたイベントへの反響も大きかった。そして私たちは、彼の空をもっと見たい、と思った。空だけの写真集はつくれないものだろうか。心当たりの編集者に相談してみたら、彼女はひとめで作品を気に入ってくれた。デザインはスパイラルペーパーですでに協働していたイットイズデザインの伊丹友宏にお願いした。
まず、ミラノの彼のスタジオで、撮りためたすべての空の写真をみせてもらい、本について議論した。写真はポジのためすべて1点しかない。これらを預かり東京に戻った。それからデザイナーとあらためて写真を選び、ページネーションを考えた。作家、デザイナー、編集者、三者の間で何度もプランが行き来した。
Toscana1999、Tokyo1994、Veneia 1996と、ページをめくるたびに異なる土地の異なる空が出現する。想像の余地をできるだけたくさん残したいという思いから、解説や説明はあえてやめた。
青い空が次第に変化し、さまざまな雲が現れ、オレンジやピンク、濃紺へと変容していく。ただの空。だが、ひとつとして同じ空はない。それは自明なことだが、こうして書物というオブジェとなり、手で触れると、なにか嬉しい気持ちになる。一冊の空を、フランスの小包郵便からヒントを得た段ボールボックスに納めた。
本書は、カワイイファクトリーが初めて企画・編集したアートブックである。

著者 廣瀬 智央
装幀・デザイン 伊丹友宏(イットイズデザイン)
企画・編集 カワイイファクトリー、TBSブリタニカ(現・阪急コミュニケーション)
印刷 新藤美術印刷株式会社
製本 大観社製本
発行年 2000年(絶版)
発行所 TBSブリタニカ(現・阪急コミュニケーション)
ISBN4-484-00401-1